DAIは、イーサリアムブロックチェーン上で運用される分散型ステーブルコインで、米ドルに対して1:1の価値を維持することを目指しています。
これは、MakerDAOという分散型自律組織(DAO)によって管理されており、従来の中央集権型ステーブルコインとは異なり、暗号資産によって裏付けられています。
以下に、DAIの特徴とその仕組みについて詳しく解説します。
DAIの特徴
1. 分散型であること
DAIは中央管理者が存在しない分散型のステーブルコインです。
これは、MakerDAOというコミュニティによってガバナンスされており、MKRトークンを保有するユーザーがプロトコルのパラメータ変更に投票できます。
この分散型の性質により、中央集権的なリスクが低減され、透明性と信頼性が高まっています[1][2][4]。
2. 暗号資産による担保
DAIは法定通貨ではなく、暗号資産(主にイーサリアムなど)を担保として発行されます。
ユーザーは担保として暗号資産をスマートコントラクトにロックし、その価値に応じたDAIを発行します。
担保は常に発行されたDAIの価値を上回る必要があり、多くの場合150%以上の過剰担保が求められます[1][3][6]。
3. 価格安定性
DAIは米ドルに対して「ソフトペッグ」されています。
価格が1ドルから乖離した場合、MakerDAOプロトコル内で金利(「安定化手数料」)が調整され、それによって供給量が調整されます。
例えば、DAIの価格が1ドルを下回ると金利が上昇し、借り手は借金を返済して担保を引き出す動機付けが強まります。
一方で、価格が1ドルを上回ると金利が低下し、新たなDAIの発行が促進されます[1][4][10]。
4. マルチコラテラル対応
当初はイーサリアムのみが担保として使用されていましたが、現在では複数の暗号資産(例:BAT、USDC、wBTCなど)が担保として利用可能です。
このマルチコラテラルシステムにより、リスク分散と価格安定性が向上しています[2][5]。
5. パッシブインカム
DAIホルダーは「DAI Savings Rate(DSR)」を利用して利息を得ることができます。
この機能により、ユーザーはDAIをスマートコントラクトに預け入れ、その対価として利息を受け取ることが可能です[2][5]。
DAIの仕組みについて
1. 担保付き債務ポジション(CDP)
DAIの発行には「担保付き債務ポジション(CDP)」または「Maker Vault」と呼ばれるスマートコントラクトが使用されます。
ユーザーはETHや他の対応する暗号資産をVaultにロックし、その価値に応じたDAIを借り入れることができます。
この際、発行されたDAIの価値以上の担保(通常150%以上)が必要です。
もし担保価値が一定水準を下回った場合、自動的に清算されます[3][6][7]。
2. 清算メカニズム
担保価値が発行されたDAI以下になると、自動的に清算プロセスが開始されます。
このプロセスでは、一部または全ての担保資産が売却され、その売却益で借入額と手数料を返済します。
この清算メカニズムにより、システム全体の安定性と信頼性が維持されます[6][7]。
3. スマートコントラクトとオラクル
MakerDAOプロトコルはスマートコントラクトとオラクルによって支えられています。
オラクルはリアルタイムで暗号資産の価格情報を提供し、それに基づいて各CDPの健全性や清算リスクを評価します。
また、この情報はガバナンスにも利用され、MKRトークンホルダーによる投票でプロトコルパラメータ(例:担保比率や金利)が調整されます[6][9]。
メリット
- 安定した価値: DAIは米ドルとのペッグによって価格変動リスクを低減し、特にボラティリティの高い暗号通貨市場で安定した価値保存手段として利用されています[5][9]。
- グローバルアクセス: DAIはイーサリアムネットワーク上で運用されているため、国境を越えた取引や送金にも便利です[5]。
- 金融包摂: 銀行口座や信用履歴なしでも利用できるため、金融アクセスの少ない地域でも活用されています[5]。
デメリット
- システムの複雑さ: DAIの発行や清算メカニズムには高度な理解が必要であり、新規ユーザーにはハードルとなる場合があります[1][9]。
- 競争環境: ステーブルコイン市場には多くの競合製品(USDTやUSDCなど)が存在し、それらとの競争も課題となっています[1]。
DAIのまとめ
DAIは分散型かつ暗号資産によって裏付けられたステーブルコインとして、その独自性と安定性からDeFiエコシステムで重要な役割を果たしています。
その透明性や分散ガバナンスモデルによって、多くのユーザーから信頼されています。一方で、その仕組みは複雑であり、新規ユーザーには学習曲線があります。
しかし、その安定した価値と柔軟な利用方法から、大きな可能性を秘めた暗号資産です。
出典:
[1] https://ff.io/blog/currency/dai
[2] https://www.gemini.com/cryptopedia/dai-stablecoin-what-is-dai-token
[3] https://komodoplatform.com/en/blog/what-is-dai-dai/
[4] https://kriptomat.io/cryptocurrency-prices/dai-price/what-is/
[5] https://www.withtap.com/blog/what-is-dai
[6] https://en.wikipedia.org/wiki/Dai_(cryptocurrency)
[7] https://corporatefinanceinstitute.com/resources/cryptocurrency/what-is-makerdao-and-dai/
[8] https://www.ledger.com/unavailable-uk
[9] https://www.hostmerchantservices.com/articles/what-is-dai-coin-how-does-this-stablecoin-work/
[10] https://www.moonpay.com/learn/cryptocurrency/what-is-dai
[11] https://www.chainport.io/knowledge-base/what-is-dai